いつでも逃げられる
私に満足いくまで食事を食べさせると、男はやっと自分の食事を始める。

…もう私の口に、ガムテープを貼ろうとはしなかった。

私の落胆振りを見たからだろう。

どんなに泣き叫んでも、助けを乞うても。

この場には誰も現れない。

私の助けを求める手は、誰にも届かない。

目隠しに、涙が滲む…。

「寂しくないよ」

ふと。

食事をしながら男が言った。

「僕がずっとそばにいる。加奈子ちゃんがおかしな真似さえしなければ、僕がずっと大切にしてあげるし、何でも望むようにしてあげる」


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