いつでも逃げられる
私は…別に答えたくもなかったけど、あまり男を怒らせても得にはならないので一つ一つ答えた。

母が一年前に離婚した事。

その母が再婚相手の今の父親と仲良くやっている事。

父の連れ子である、1歳下の義理の弟が無愛想で、一度も声を聞いた事がない事。

その弟が家にも寄り付かず、無免許で毎晩バイクや車を乗り回している事。

そういう家なので何となく私も居辛くなっていた時、勇作と出会った事。

その勇作も、私の心の拠り所にはならなかった事。

…最初は男の質問に嫌々答えていた筈なのに、何故だろう…私はいつの間にか率先して自分の事を話し始めていた。

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