いつでも逃げられる
そこまで考えて。

「……!」

私は自分の思考に疑問を持つ。

何よ…これじゃあまるで、私が男に押し倒されるのを待っているみたいじゃない!

いつの間にか上気して、火照り始めていた体を縮こまらせる。

「…加奈子ちゃん?」

私の体を拭いていた男が、訝しげな声を上げる。

「も、もういいわ!私に触らないで!」

声を裏返らせ、私は逃げるように男から離れた。

…どうかしている。

私は待っているの?

男が、むしろケダモノのように私を襲うのを…待っているの…?

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