いつでも逃げられる
ゆっくりと体を起こされ、私は車から下ろされる。

男が私の肩を抱き、ゆっくりと前へ進むように促す。

…触れられるたびに嫌悪が走った。

身じろぎ、暴れ、男の手を振り解こうとして。

「!」

足をもつれさせ、転倒する。

水溜まりがあったらしく、そこに足をとられたのだ。

「大丈夫かい!」

男は慌てたように私を起こした。

制服が水に濡れた不快な感触。

肌に張り付いて気持ちが悪い。

…涙が出てきた。

恐怖?

嫌悪?

怒り?

不安?

自分でも、何の涙かは理解できなかった。

< 9 / 80 >

この作品をシェア

pagetop