いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ


俺は、試合が地方である日以外は
毎日衣緒李会いに行った。


勇人と一緒に。


勇人はいつもいつも、
俺に申し訳なさそうにしていた。


『勇人、いい加減俺に気なんか使わなくていいよ?衣緒李のこと考えると、仕方ないんだし』


本音だった。

しかし、勇人の答えは
意外なものだった。


『越智さん、違うんですよ』


『何が』


『違うんす、すいません…』


勇人の顔が曇る。


『何がだよ、言えよ』


『俺気付いてしまって…



 まだ、衣緒李のこと好きなんですよ…この状況に、甘えようとする自分がいるんです…』


頭の中が真っ白になった。


『お前、でも鈴音ちゃんは』


『別れます。衣緒李といると、昔のこと思い出してしまって…ごめんなさい、衣緒李は越智さんの奥さんなのに』


俺は何も言わなかった。


言えなかった。


それから俺達は無言で
衣緒李の病院に向かった。


どうしていいのか
わからなかった。


このまま記憶が戻らなければ、
俺とは離婚して
勇人と一緒にいたほうが
衣緒李にとっては幸せかもしれない。


でも…


でも………



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