いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
『あ、勇人!と越智さん!毎日ありがとうございます』
いつものように、
明るい笑顔で
衣緒李が迎えてくれた。
本当に病気なのかって
疑ってしまうくらいに、
明るい笑顔だった。
『皐樹さんは?』
『なんか買い物行ったみたい。そんなことよりさ、勇人、この指輪何か知ってる?』
『え?』
衣緒李は自分の左手の
薬指を指差す。
俺のあげた結婚指輪だった。
『勇人とのペアリングじゃないよね、これ。あたしが買ったわけじゃないし、しかもなんか高そうだし…なんか怖いよ。気付いたらはめてたの』
本気で不思議そうな顔をする
衣緒李を見て俺は、
涙をこらえきれなかった。
悔し泣きだった。
『越智さん?!どうしたんですか?!』
衣緒李が心配そうに俺を見る。
『なんでもないよ…ちょっと、ごめん…』
俺は病室を飛び出し、
病院の外にある喫煙所に行った。
とくに理由はない。
ただ、一人になりたかった。
そんな俺の願いも虚しく、
喫煙所には先客がいた。
若い女の子だ。
これじゃ、泣くこともできない。
仕方なく別な場所を探そうと思い
喫煙所をでると、
その子に話しかけられた。
『あなた…もしかして越智さん?』