いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ


『……え?』


『初めまして、鈴音です』


『あっ勇人の!!』


そこにいたのはそう、鈴音ちゃんだった。

疲れた雰囲気で、
なんだかやつれていた。


『こんなとこで、どうしたの』


『あたし、勇人追っ掛けてこの病院まで来たんです。でもまさか、IOちゃんとまだ繋がってたなんて…。IOちゃん、越智さんと結婚しましたよね?どうして勇人が?』


鈴音ちゃんが悔しそうな顔をする。


『ごめんね、衣緒李が』


『越智さんが謝ることじゃないですよ。でも…あたしフラれるんでしょうね、今の状況から考えると。結婚、考えてたのになぁ』


『鈴音ちゃん…本当に、何て言っていいか』


『でも、いいんです!IOちゃんに尽くす勇人見てる方が辛いから。……越智さんは、大丈夫なんですか?』


『辛いけど…耐えるよ。きっと、記憶は戻ってくる。衣緒李は、何があっても俺の妻だから』


鈴音ちゃんが弱々しく微笑む。


『…強いんですね。あ、あたしのことは気にしないでください。別に恨んだりしませんから。それじゃ』


そう言って、鈴音ちゃんは出て行った。


彼女が病院に姿を見せたのは、それが最初で最後だった。


それから数日後、
勇人と鈴音ちゃんは別れた。



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