いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
――――――――――――――


帰りのバスの中。

全員しょぼくれて、
重たい空気が
流れていた。


…負けた。

勝てない試合ではなかった。
気合いも充分だった。

内容も悪くはなく、
みんなよくやっていた。

でも、負けたのだ。


『クライマックス、苦しくなったな』

『あぁ…ぶっちゃけ、無理じゃないか?』


誰かが話すのが聞こえる。


違う、こんなのは違う。

たとえ2位通過でも、
結局は同じことだ。


絶対優勝する。


その日から、俺は
病院に出入りすることさえも止めた。


衣緒李のことは、
勇人に任せることにしたのだ。


簡単な決断ではなかった。


でも、このままズルズルいくと
衣緒李は絶対に
俺を思い出すことができない。


だから、


試合で活躍して
チームが優勝するところを
衣緒李に見せることができれば、


もしかしたら
何か思い出してくれるかもしれない。


そのためには、
今の俺には
足らないものが多すぎる。


ぎりぎりまで鍛えあげて、
衣緒李に何か
感じさせることができれば。


だから俺は、
試合まで衣緒李には会わない。


自分自身を追い詰めるためにも、
そう決めたのだ。


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