いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
『…ぃおりっ!!!』
いてもたってもいられなくなり、
俺は練習をぬけて
病院へ行った。
『…弘樹……』
そこにいたのは、達樹だった。
衣緒李は眠っているようだった。
『達樹、衣緒李は…』
『弘樹が来ないあいだに、だいぶ悪くなったみたいでさ…もう、メシも自分じゃ食えなくなって、ずっと中村君があげてんだ』
ベッドに目線を落とすと、
そこにいたのはもう、
楽しかった頃の
衣緒李ではなかった。
『達樹、頼む…野球中継、衣緒李に見せてくれないか』
『野球中継?』
『CS、俺…絶対頑張るから…』
達樹は、
何かを悟ったようだった。
『…わかった。無理はするなよ』
俺は衣緒李の頬にキスをして、
病室をあとにした。
シーズン終わるまで会わないっていう
俺の決断は間違ってたのだろうか。
俺の知らないところで、
衣緒李は苦しんでいるのに。
でも、やっぱり
俺には野球しかない。
衣緒李に見てほしいのは、
俺の野球やってる姿だ。
本当は傍にいたい。
死ぬ程傍にいたいけど、
同じくらい、
また俺のことを
愛してほしいから。
俺は野球をするしかない。
けれど、
次の日の
試合前に受け取ったオーダーに、
俺の名前はなかった。