いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
監督の言葉に嘘はなく、次の日はちゃんと俺はスタメンに入っていた。
衣緒李はもう長くない。
衣緒李はもう長くない。
衣緒李はもう長くない。
頭に、勇人の言葉が浮かんだ。
信じたくない事実が重い。
やるしかない。
監督は言った。
『今日勝てば2位通過だ。オーダーも、ベストメンバーで固めたつもりだ。お前らならやれる、全力尽くしてこい』
『『『はい!!!』』』
その試合は怖いくらいに順調だった。
7回までに2点先取した上、相手方を0点に抑えられていた。
そんな中、俺は一人四球のみ。
バットで出塁はしていなかった。
勝てる。
俺は打てなくてもいいから、今日だけは勝たせてくれ。
そんな思いで守備についていた。
そのとき、状況は一転した。
8回表、敵チームの攻撃。
ツーアウト2、3塁のノースリー。
高めに入った甘い球が、バットに捕まった。
高く上がったボールは手の届かないところへ飛んだ。
大歓声と共に立ち上がるファン達。
大画面に写し出された
"THREE RUN" の文字。
逆転されてしまった。
ゆっくりとダイヤモンドを回る選手の笑顔を、初めて憎らしいと思った。
「悔しい」ではなく、「憎い」と。