いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ


『お前には,李砂奈という名前の双子の妹がいる』



そう父親から聞いたことがある。



実際のところ,あたしには李砂奈に関する記憶が全く無かった。



というのも,あたしの両親はあたしが生まれてすぐに離婚している。


あたしと2人の兄は父に,李砂奈は母に引き取られたそうだ。



写真すら見たことは無かったし,
まして一度だって会ったことは無かった。



そんな李砂奈が越智さんの元カノだなんて。



世間て狭いんだね。



そんなことを考えていると,何故かわからないが無性に会いたくなってきた。



あたしにそっくりな妹に。






『越智さん,無理にとは言いません。李砂奈に,会わせてもらえませんか』



すると越智さんは目を伏せ,言いにくそうに口を開いた。


『なんで,李砂奈が俺の"元"彼女になったんだと思う…?』


『えっ?』



『李砂奈は,病気で死んだんだ』



あたしは思わず口を押さえた。





一度も会うことのないまま,
あたしの片割れは


死んでしまっていたんだ――……






見たこともない人の
死を悼んで泣けるのは
やっぱり双子だから?



涙が止まらない…。








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