いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
『…落ち着いた?』
『はい…』
桜井さんはさっき帰っていってしまったみたいだけど,越智さんはあたしが泣き止むまでそばにいてくれた。
『ごめんね,俺が早く言わなかったから…』
『越智さんのせいじゃ,ないですよ』
越智さんが申し訳なさそうな口調で続ける。
『ううん…実は,言わなかったんじゃなくて,言えなかったんだよね』
『言えなかった?』
『俺,衣緒李ちゃんを初めてテレビで見たとき,真っ先に"李砂奈だ"って思ったよ。会いに行かなきゃって…。でも李砂奈は死んだんだ,そんなはず無いって必死に自分に言い聞かせてた。そんなときに,衣緒李ちゃんが勇人と付き合ってることを知った……』
『……』
『正直,衣緒李ちゃんと李砂奈を重ねて見てた。李砂奈が生き返って,俺に会いに来てくれたんだって思ってた時期もあったよ。でも,衣緒李ちゃんは衣緒李ちゃんだし,李砂奈は李砂奈だって,ちゃんと理解できた頃に…衣緒李ちゃんのことを好きになってる自分に気付いた』
『越智さん…?』
『李砂奈のこと,忘れたわけじゃないよ。でもあいつ言ったんだ,早く次の彼女作れって…死ぬ間際にも俺のことばっかり心配して……』
越智さんはうっすらと涙を浮かべていた。
声もかすれている。
あたしの目からも再び涙が溢れた。
『だから,俺,あいつの為にも前に進みたい』
越智さんの真っすぐな目があたしに向けられる。
『好きです。俺と,付き合って下さい』
あたしは黙って頷いた。