いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ


次の日。


試合は8回裏。


1−0でドルフィンズが負けていた。


衣緒李の表情は遠すぎて見えないけど,
きっと不安そうな顔して見てんだろうな。



さて,俺の打席だ。


ストレートを狙って初球から振りぬく。





…あっけなくレフトフライに終わった。


スリーアウトチェンジ。




結局俺はこの日まだノーヒットだった。


9回に俺まで回るわけないしな。



さ,守備守備。


俺は守備位置についた。







その後ピッチャーの西野が踏ん張りツーアウトまで取ったが,


ランナー3塁。


緊迫した雰囲気が流れる。


これ以上点を取られるわけには行かない。


カウントツーツー。


西野がボールを投げる。




即座にバットの快音が響いた。


…なんだセカンドゴロか,俺のボールだ―




?!



会場全体を驚きが包んだ。



――――ファンブル……?!



あろうことか,俺のミットはボールを弾いた。



相手側の応援席から歓声があがる。



1点返された…
俺のせいで…



いつもならすぐに切り替えもきくが,衣緒李がすぐそこで見ていると思うと堪らなかった。



次の打者は西野が三球三振に打ちとった。



スリーアウトチェンジ。



『ドンマイドンマイ』


西野を始めとして,皆が声をかけてくれた。


ショックを隠せないまま,俺はベンチに戻った。






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