いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
衣緒李と歩く帰り道。
澱んだ沈黙を破ったのは衣緒李のほうだった。
『こんな日も,あるよ』
『ごめん…』
『なんで謝るの』
『友達もいたのに…かっこわるいとこ見せて悪かったなって…』
衣緒李は笑って首を横にふった。
『心配しなくても,あたしは堂々と言えるよ?"ドルフィンズの4番はあたしの彼氏です"って。たとえこの先,今日以上の失敗をしたとしても,弘樹はあたしの1番だよ。それだけは変わらないから』
……それなんだよ。
俺が1番欲しかった言葉。
『あなたはあたしの1番です』って
ずっと言って欲しかった…
その言葉さえ貰えたら,
俺はもう立ち直れる。
『ありがとな』
『次は頑張ってよねっ』
衣緒李は無邪気に笑った。
『どっかで飯食うか?腹減ったろ』
『うーん…時間も遅いし,あたしはもう帰るよ』
時計は深夜11時をさしていた。
『わかった。じゃぁ送る』
『ん。ありがとう』
少々長い道のりではあったが,俺達は歩いて帰った。
隣にいるだけで,
一緒に歩いているだけで,
こんなにも幸せを感じられる。
時間だけが,ゆっくりと流れていった。