いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
8.
とある月曜。
衣緒李に誘われて,突然ながら衣緒李の実家に挨拶に行くことになった。
交際はもちろん,ゆくゆくは結婚を認めてもらうために。
その頃はもう,俺達の交際期間は1年を越えていた。
『ん―。やっぱ新幹線はいいねー!』
『そうだな。にしても,衣緒李の実家が愛知だって初めて知ったよ』
『あれ,言ってなかったっけ?田舎だよっ』
『聞いてね―よっ』
『あ…じゃあ,着いたらびっくりするかも』
衣緒李が意味ありげな笑い方をする。
『え,何それどういうこと?』
『着いてからのお楽しみ〜♪』
気,気になる…!!
『まぁいいけど…そうだ,今日は衣緒李の家の人が駅まで来てくれるんだろ。誰が来んの?』
『ん―誰だろうね』
……いやいや,
わかんないってことはねぇだろ!!
『おいおい…』
『ま,誰か手があいてる人がくるでしょ。あ,すみませんコーヒー下さい』
…呑気だなぁ。
そうこうしているうちに,あっという間に名古屋に着いた。
『着いた―!!懐かしの故郷!!』
『えっ名古屋なの?』
『違うけどねっ笑』
違うんかい!!
そのとき突然,
後ろから声をかけられた。
『お久しぶりです,お嬢様』
何やらそこにはスーツをビシッとキメた紳士が。
『羽山さん!!久しぶり―!!』
お嬢様って
お前か―い!!
『お車の用意はできてますよ,お連れ様もどうぞ』
『行こ,弘樹』
『あ,うん』
なんだこの状況…
衣緒李が『お嬢様』?
一体どうなってんだ…?!