いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ



『…で,何?悠希君』


悠希がずっと何か言いたげな顔をしていたから,俺は敢えてついていかなかったのだ。


『呼び捨てでいいから』


『あ,そ』


『衣緒李の,彼氏だって?』


やっぱりその話か。


『そうだけどそれが何か?』


『別に。衣緒李があんたのどこに惚れたんだろうな―て思っただけ』


コイツ,
嫌な言い方をしやがる。


『そんなの,衣緒李に聞けば?』


『……言っとくけど,俺はお前なんかに負ける気しないから』


『は?』


『約束したんだ。衣緒李は俺の嫁にするって』




…意味わかんねぇ。


でも,ライバルってことは間違いなさそうだ。



『俺だってすんなり衣緒李の彼氏になれたわけじゃねんだよ。奪えるもんなら,奪ってみな』


俺もおもいっきり言い返す。



しばしの沈黙が続く。





そのとき。


『ハナミズキ見てきたよ!!綺麗に咲いたんだねえ』


衣緒李が,戻ってきた。


『おう。お前が喜ぶと思って大事に育てたんだぜ』


『悠ちゃんありがとうねっ』



衣緒李が笑顔になると,悠希がちらっと俺の方を見て勝ち誇ったような笑みを浮かべた。



『あっそうだ!!パパ帰ってきたってさっきいつ兄からメールあったんだ,帰ろう弘樹』


『うん』



衣緒李の手が俺の手を自然に握る。



悠希が悔しそうな顔をしたから,俺は衣緒李からは見えないように悠希に舌を出してみせた。





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