いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ


『…ここが,パパの書斎だよ』


コン コン


『衣緒李だろう。入りなさい』


衣緒李がドアを一気に開ける。


『パパ,ただいま』


『あぁ,お帰り。…そこの君も,入りなさい』


入口に突っ立っていた俺は,はっと我に帰る。


『し,失礼します』


この人が,衣緒李の父親…。


思っていたより優しそうな人だった。


でもやはり,どこか厳しい顔も持っていて真面目な感じだ。


『君が弘樹君だね。衣緒李からよく聞いているよ』


『は,はい。衣緒李さんとお付き合いさせていただいている越智弘樹と言います。初めまして』


ガチガチな俺を見て,衣緒李パパは可笑しそうに笑う。


『そんなに固くならなくていい。私は渡邊皐樹(ワタナベサツキ)だ,よろしく』


『よろしくお願いしますっ』


良かった…。
思っていたよりリラックスできそうだ。


『それじゃあ衣緒李,私と弘樹君を2人にしてくれ』


『へっ?!』


俺は思わず素っ頓狂な声をあげる。


『はいはい,じゃあね弘樹』


『え,えぇっ?!』


衣緒李は部屋を出て行ってしまった。


『そう慌てなくていい。少し話をするだけだ,まぁ座りなさい』


『し,失礼します』


俺はソファに腰掛けた。




ここからが,本番だ―…




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