いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
『一つ,聞きたいことがある』
皐樹さんはさっきとは違う声色で言う。
『なんでしょう』
俺は緊張しながら返事をする。
『君は…李砂奈と付き合っていたそうだね』
『はい』
『衣緒李のことを,李砂奈と重ねているんじゃないのか』
『えっ…』
やっぱり…
そう思われるのは
仕方ないのかもしれない。
双子の両方と付き合うなんてそうそう無いからな。
でも,俺が好きなのは
【李砂奈】じゃなく,
【衣緒李】なんだ。
『有り得ません。確かに,李砂奈さんのことは愛していました。でも,それと衣緒李さんとのことは関係ありません。僕が今,愛しているのは衣緒李さんだけです』
俺はきっぱりと言い切った。
『そうか…。私はそれを,信じてもいいかな?』
『もちろんです』
『…ありがとう』
そう言って笑う皐樹さんの視線の先に,1枚の写真が立ててあるのに気が付いた。
『あの,その写真は…』
すると,皐樹さんはその写真を黙って俺に手渡した。
それは,家族6人で幸せそうに映っている,渡邊家の写真だった。
おそらく生まれてすぐなんだろう,衣緒李と李砂奈と思われる双子はまだ赤ちゃんだった。
『私たちがまだ,幸せな家族だったころの写真だ』
皐樹さんが遠い目をする。
『あの頃の話を,聞いてはくれないか』
俺が頷くと,皐樹さんは静かに話し始めた。