いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
部屋を出ると,俺は重大なことに気がついた。
―――どっから来たっけ?
さっきは衣緒李と一緒だったが,今度は一人。
俺は自分が極度の方向音痴だということをすっかり忘れていた。
更に,この状況でどこに行けばいいかもわからない。
…っ…やばい…!!
こうなったら適当にうろうろしてみるしかない。
確か,こっちだったような…
ん?こんなとこに部屋なんかあったか?
まぁいいや,ここを曲がって…
『あの…あなた誰ですか…?』
ん?
振り返るとそこには,高校生くらいの女の子が立っていた。
『え,あの』
『きゃ―――誰か!!誰か来て下さい!!!不審者がうろついてます!!!』
えぇぇぇえぇっ?!
『待って,俺は不審者なんかじゃ―』
『近づかないで下さい!!もう,誰か早く来て!!』
やばいやばいやばい!!!
『何の騒ぎですかっ?!』
やってきたのは
小柄でふっくらとしたおばさんだった。
『斎藤さん!!あの人がこの家のなかをうろついていたんです』
『ちがっ俺は―…』
斎藤と呼ばれたおばさんはきょとんとしていた。
『あら?もしかして,あなたが越智弘樹さん?』
俺の名前を知ってる…
ってことは…
た,助かった―…。