いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
『あのさ―衣緒李…』
『何?』
『悠希とお前って,何歳くらいからの付き合いなの?』
『どうしたのいきなり。そうだな,5,6歳だと思うけど。…もしかして嫉妬〜?』
そう言って笑う衣緒李は父親の考えを何も知らないんだと思うと,なんだかやり切れない気持ちになって俺は視線をそらした。
『あぁそうだよ。嫉妬だよ。妬いて悪ぃかよ?あいつは,俺の知らない衣緒李をたくさん知ってる。
…悔しいんだよ……』
衣緒李の手が,俺の頭に触れる。
びっくりして顔をあげると,そこには衣緒李の笑顔があった。
『もう…何言ってんの?そりゃ,弘樹の知らないあたしは確かにいる。でも,弘樹しか知らないあたしの方がいっぱいいると思うよ?』
慰めるようにそう言った。
『だよ…な?お前は俺だけのもんだよな?』
『当たり前じゃん』
…大丈夫だ。
あいつになんか,負けるわけない。
俺は衣緒李を愛してる。
衣緒李は俺を愛してくれてる。
その事実さえあれば,
俺達はきっと
幸せになれる。
幸せにするって決めたんだ。
衣緒李のこと…
その日は衣緒李の家に泊まったが,皐樹さんとはそれ以上話さなかった。