いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
次の日。
試合を控えた俺にあわせて,衣緒李も早いうちに東京に戻ることになった。
衣緒李が家族と話しているあいだ,俺は悠希に会っていた。
『弘樹ぃ,もう帰っちゃうなんて寂しいよ』
『うるせーよ。思ってもないくせに』
『ホントだよ?だってさ,弘樹が帰るってことは衣緒李も帰るってことじゃんか』
…つくづく腹のたつヤツ。
『お前,殺すよ?』
『怖っ。まぁ,弘樹のことはライバルって認めてやっからさ。いつか衣緒李が俺のものになるまでせいぜい頑張れよ』
にこやかに手をふる悠希の頭を軽く殴り,俺は別れを告げた。
『弘樹,そろそろ新幹線の時間だよ』
『そうだな,行くか。あの,皆さんお世話になりました』
衣緒李を見送りに来てた人達に挨拶をする。
お固い感じがするけど
実は優しい慈樹さん。
お調子者で
すぐに仲良くなった達樹。
何かと気を使ってくれる
紳士な羽山さん。
最初は焦ったけど
可愛い天然な香苗ちゃん。
実は,皆いい人だ。
この家に来て,
衣緒李の身近な人達に会えて
よかった。
『駅まで,お送りします』
『悪いね,羽山さん。ありがとうっ』
再び羽山さんに駅まで送ってもらい,俺達は東京に戻った。
明日からはまた遠征だ。
……頑張ろう。
皐樹さんに,
認めてもらうためにも。