いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ

9.



『越智最近動き鈍いぞー?ダッシュ5本プラスしとけー』


『はいっ』


今は,遠征先で練習中だ。


なんか早速注意されてる俺だけど泣。



…でも,確かにコーチの言うことは正しい。


最近,なんか俺
動けてない。



『どしたんスか越智さん。しっかりして下さいよぉ』


『…お,おう』



俺に声をかけてきたのは勇人だった。


コイツにはよくカバーしてもらってるから,でかい口も聞けなかった。



『よーしじゃあそろそろ終わるぞー』


コーチの一声で,皆が一斉に片付けにかかる。



そんななか,


『お疲れさん』


俺は監督に声をかけられた。


『お疲れ様っス』


『お前最近どうした?スランプか?』


『や,なんでもないっす。すみません』


『なら,いいんだけどな。こんな状態が続くようじゃ,2軍に降りることも考えてもらうぞ』


『えっ』


2軍…?
4番の俺が……?



『まぁ,そういうことだ。しっかりやってくれよ』



監督が直々に
2軍落ち宣言なんて…


…笑えねぇよ。



とてもじゃないが,衣緒李には絶対言えない。



俺はとぼとぼと遠征先のホテルに戻った。



口からは,ため息しかでてこない。



フロントでキーを受け取り,部屋へ向かう。


『あっ越智さーん,これから一杯どうスか?』


西野の誘いも断る。



今夜はとても,そんな気になれなかった。



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