いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
『お前のこと見捨てた訳じゃない。ただ,ちょっと新人を出してやりたい気持ちがあったなかでのお前のスランプだったもんでな。心配すんな,この3連戦が終わるまでの辛抱だ』
監督は優しく言ったつもりだろうが,俺には耐えられなかった。
…悔しかった。
ホテルに戻り,真っ先にケータイを開いた。
香苗ちゃんに,電話したい…。
衣緒李から
『今日どうしたの?』って
メールが来ていたけど
返さなかった。
電話が先だ…
『もしもし?今日あたしテレビで試合見て
『逢いたい…』
…えっ?
今俺……
"逢いたい"って言った…?
しばらく沈黙が続く。
『……寂しいんですよね,わかりますよ…。あたしでよかったら,いつでも会いに行きます』
『じ,じゃあこの3連戦が終わってから…3日後でいいかな』
『わかりました。弘樹さんに会えるの楽しみにしてますね。では,また』
『おやすみー』
ふぅ。
なんか,
ノリで会うことになってしまった。
……でも,
香苗ちゃんなら,
なんとなく,
わかってくれそうな気がする。
俺の気持ち。
試合に出られない2日間は,
必死に自主練に取り組むだけで終わった。
明日になれば
香苗ちゃんに会える。
それだけで体を動かしていた。
衣緒李のことなんか,
もはや頭には無かった。