いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ



そしてついに,約束の日。


一面に広がる青空の下で,
俺は香苗ちゃんを待っていた。


なんだかそわそわする。
どうしたんだろ,俺…。







20分くらい待っただろうか。


『弘樹さーんっ!!』


遠くで俺を呼ぶ声。


走ってこっちに向かってくるのが見えた。


『すみません遅れてしまって。待ちました?』


『ううん,全然。…久しぶり』


『お久しぶりですね。会いたかったです』


『上手なお世辞をありがとう(笑)じゃ,行こっか』



並んで歩きはじめると,香苗ちゃんが俺の手を握ってきた。


『香苗ちゃん,それはマズいよー』


俺はおどけながら言ったが,香苗ちゃんの表情は真剣だった。


『今日だけ,今日だけでいいんです。あたしのこと…衣緒李さんだと思って下さい』


ん?


『あの,それってどういう…』


『一日だけ,あたしを恋人にしてください』



香苗ちゃんの顔は真っ赤になっていた。


どうやら嘘をついているわけではなさそうだ。


『まぁ…手ぐらいはいっか』


俺は何だか恥ずかしくなって,
適当にごまかした。




そのまま,俺達は
まるで恋人同士かのように
仲良く歩いた。


東京は初めてだという
香苗ちゃんのために,
いろいろ案内して
観光や買い物を楽しんだ。



プリクラを取ったり,
クレープを食べたりしているうちに,
なんだか香苗ちゃんが
本当に彼女のような気がして


正直嬉しかった。


本物の彼女とは,
デートなんてほとんどしていないから。




香苗ちゃんが,




俺の彼女だったらいいのに…






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