いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ


『はい,どーぞあがって』


『おじゃましま〜す!わぁ,案外綺麗なんですねっ』


『案外は余計だ案外は』


『あっ!かわいい!!』



香苗ちゃんが食いついたのはサンドロだった。


飼い主たるもの,ペットを褒められるとやっぱり嬉しい。


『かわいいしょ?触っていいよっ』



…とは言ったものの,サンドロは明らかに香苗ちゃんを威嚇していた。


『ウ〜…』


『どうしたのー?あたし怖い??』


『キャン!!キャンキャン!!』


『ごっごめん香苗ちゃん,こいつ初対面の人噛む癖があって危ないから,ごめんね』



俺は無理矢理サンドロを引き離す。



不満そうな顔をする香苗ちゃんを無視して俺は話をそらした。


『それより,先お風呂入ってきなよ。俺晩飯作ってるから』


それを聞いた途端,
笑顔になる香苗ちゃん。



『わかりましたっ!えと,じゃぁ着るものとタオル貸してもらっていいですか』


『あっうん,ちょっと待って』



俺は香苗ちゃんのために
すぐにジャージを用意した。


『ありがとうございます!じゃあいってきますねっ』


『いってらっしゃーい』



このジャージを
かつて衣緒李に貸したことなんて,


俺は忘れたフリをした。




< 81 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop