いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
次の日。
香苗ちゃんを
駅まで送るために
朝から車を出した。
『忘れ物,無いよね?』
『大丈夫です。お世話になりました』
『いえいえ』
駅について車を降り,
ホームまでは
2人で並んで歩いた。
気まずさもあって
口数はかなり減っていた。
二人で電車を待つ。
『…ぁの』
香苗ちゃんが口を開く。
『何?』
『また,来てもいいですか?』
『…俺の彼女になったらね』
わざとらしく
香苗ちゃんは
凹んだ顔を見せる。
そのときちょうど
電車がはいってきた。
『なら,せめて』
蚊の鳴くような声で
香苗ちゃんが言う。
『もう一回だけ
キスしてください…』
俺は香苗ちゃんの
要求をのんだ。
横から軽く,
触れるか触れないかくらいの
キスをした。
『満足?』
『…いえ,まだです。あたし絶対,彼女になってここに来ますから』
香苗ちゃんの必死さは,
素直に嬉しかった。
『ありがとうね』
『…何がですか?』
『俺のこと…好きって言ってくれて』
香苗ちゃんの顔が
赤くなる。
『そんなこと,彼女にしてから言ってくださいっ』
『…そうだね。じゃ…また』
電車のドアが閉まる。
軽く手を振って
俺は車へと戻る。
キーを差し込んだそのとき,
1番嫌な声に呼び止められた。
『越智さん…なにしてるんですか?』