いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
10.
衣緒李との中が
復活すると,
自然と俺は野球のほうでも
打てるようになった。
精神的なもんは
だしちゃいけないってのに。
ま,二軍落ちは免れたし
結果オーライだな。
『なんか調子よさそうっすね』
笑顔で近付いてくる奴が一人。
『お,勇人じゃん。まぁな,お前に抜かれないように頑張ってるよ』
勇人とはあの件以来
なんだか仲良くなった。
なんだかんだ,
まぁあいつには
感謝してる。
『ところで越智さん』
『なんだよ』
『今日て大事な試合じゃ
なかったでしたっけ』
『…そーだよ。わざわざ言うなよ』
そう。
今日は,俺にとって
何より大事な試合。
衣緒李の家族が,
見にくるのだ。
今日活躍しとかないと…
結婚は不可能に近いだろう。
『…あの香苗って子,
来るんですか』
『ん…来るかも』
『…そうっすか』
あのあとすぐに,
香苗ちゃんとは終わった。
はっきり断ったのだ。
なのに香苗ちゃんは…
『弘樹さんの気が変わるの,
あたし待ちますから!』
だって。
その後はあんまり関わってないのだが…
勇人はどうやら,
香苗ちゃんが嫌いらしい。
『…でもマジであの子,
気をつけた方がいいっすよ?
俺の元カノにも
ああいうタイプいましたけど…
なんか手段を選ばないっつーか…』
『大丈夫だって。勇人は気にしすぎなんだよ』
『でもとりあえず
衣緒李は気にかけて下さいよ?!
ああいう子が手をだすのは
彼女の方なんすから』
『…りょうかいっ』
あの子は立場上
衣緒李に手出しは
出来ないと思うんだけどな。