いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
そして。
あっという間にプレイボール。
客席には
衣緒李一家がいた。
よりによって,
バッターボックスから
見えるとこに。
場の雰囲気に
あまりに合ってない
皐樹さんの姿を見て,
俺はガチガチになった。
ミスだけは,できない…
そんな俺の思いをよそに,
体は思うようには
動かなかった。
緊張のせいかもしれない。
三振とフライの連続,
エラーに暴投。
誰の目にも明らかなほどに
俺のプレーは酷かった。
試合が終わるころには,
相手チームの応援席からは
歓声があがった。
『いいぞ越智ー!!』
『もっとやれーっ』
ハッとして
衣緒李たちの方を見ると,
全員渋い顔をしていた
…こりゃ,しばらく
結婚は無理だ………
俺はがっくりと
肩を落とした。
『ごめんな西野,俺のせいで』
たまたま今日先発だった西野に
俺は素直に謝った。
『いーっすよ。俺も,勇人からいろいろ聞いてたんすよ,【今日越智さんガチガチや】って。気にしないで下さい。でも,その緊張の弱さはウチの4番としてどうかと思いますよ(笑)』
『すんません…汗』
『こんな日もありますって!元気出して下さい』
『…ありがとう』
西野に励まされ,
少し元気になる俺。
…まぁいい,チャンスはまだある。
衣緒李との結婚は絶対だから。
次は,
次こそは絶対
見せつけてやる。
今日は,
ホテルに行く前に
衣緒李たちのホテルに行こう。
泊まるって言ってたとこ
そんなに遠くなかったし。
軽く挨拶までにね。
そんなことを考えながら
俺は球場をあとにした。