いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
エレベーターを降りるなり,
衣緒李はスタスタと
部屋に向かう。
ちょっ,心の準備が…
ガチャッ
『パパー達兄ー弘樹連れてきたよー』
『し,失礼します』
やばい。
皐樹さんの表情が…
険しすぎる。
『弘樹今日もガチガチだったじゃーん!』
笑いながら俺の肩を叩く達樹。
『や…笑えないや』
『達兄,空気読んで』
衣緒李の一睨みで,
達樹はすぐに出て行った。
『今日,慈樹さんは?』
『慈兄は散歩』
…あれ?
突然機嫌悪い?
『試合,お疲れ様』
不意に皐樹さんが口を開いた。
『あっ!今日はせっかく来て下さったのに見苦しいプレイを見せてしまって申し訳ないです』
『本当だよ。見ていられなかった』
皐樹さんは
大きな溜め息をついた。
『パパ,今日は大事な話があるの』
衣緒李が口を挟む。
…えっ?
このタイミングで言えと?
『わかっているよ,結婚の話だろう。私はね,今日の試合で弘樹君の頼りなさがよくわかったんだよ』
…がっくり。
わかってはいたけど
直接はやっぱり辛い。
『本当に今日はすみませんでした…』
『君も,よくわかっただろう。君はまだ半人前なんだ。だから,』
皐樹さんは一旦言葉を切り,
視線を俺から衣緒李に移した。
『お前がちゃんと,弘樹君を支えてやりなさい』