いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ
病院に着くと,
外で達樹が
俺を待っていた。
『弘樹!!』
『達樹…衣緒李は?』
『ついさっき,目を覚ましたとこだよ。こっち』
達樹に連れられて,
病室へ向かう。
『どうぞ』
達樹の開けた
ドアの向こうには,
家族と談話している
衣緒李がいた。
『なんだ,元気そうじゃん』
安堵感から思わず口にだす。
『あ,勇人!!越智さんもっ』
―――――"越智さん"?
『勇人遅いよ,ずっと待ってたんだから!!』
…どういうことだ?
勇人も,
皐樹さんも慈樹さんも達樹も,
戸惑いの表情を隠せないでいる。
『勇人を,待ってたの?』
俺はやっとのことで
声を搾り出した。
『あ,越智さんが邪魔とかそういう意味じゃないですよっ』
衣緒李が慌てて訂正する。
『…衣緒李,お前の名前と好きな人の名前,フルネームで教えてくれ』
震える声で勇人が言う。
『?何急に』
『いいから』
『変なの,あたしの名前が渡邊衣緒李で,好きな人の名前は中村勇人。これでいいの?』
『衣緒李,お前は弘樹と…』
こらえきれずに言う
達樹の口を,
俺は静かに塞ぐ。
『…いいよ,ありがとう。また来るね,衣緒李"ちゃん"』
『あ,ありがとうございました!!』
病室を出ようとすると,
タイミングよく医師が入ってきた。
『あの,ご家族の方にお話が』
それを聞いて,
皐樹さんが立ち上がる。
『慈樹,達樹,衣緒李頼むな。行こう,弘樹くん』
『は,はい』
当たり前のように
皐樹さんと歩く俺の姿を,
衣緒李が不思議そうに見ていた。