伝えたい音

「健介!」


一目も気にせず大声で叫ぶと、健介は振り返った。

息を切らした私を見て、ベンチから立ち上がった。



やっと向き合えた。



私は健介のワックスでふにゃふにゃにした髪を笑った。




「変な髪型」

「うるせぇ」



健介は、少し照れくさそうに鼻をかいて言った。



「俺さ、ラブソングは苦手なんだよ。何ていうか、クサイしさ」

「そうなの?」

「うん。でも、それでも書いた!」

「何で?」

「うさぎちゃんを、迎えにいくために?」




健介、顔、真っ赤だよ。

私は笑った。









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