伝えたい音
知るか、バカ!
私は嬉しくて、もうすでに泣きそうだった。
健介は私の幼なじみで、私の初恋の人。
ずっと好きだった。
今も、好き。
でも気持ちを伝えたことはない。
私に、そういう可愛い女の子みたいなことはできないから。
ずっと当たり前に傍にいると思ってたのに、健介は親や友達の反対も押し切って高校を卒業してすぐに上京してしまった。
一番反対したのは、私だ。
三年前―――――
「俺には野望があるわけ!俺、こんなド田舎で満足するような器じゃないんだよ。分かる?」
「ぜんっぜん分かんない!」
「だ~も~!俺とこんなに長い間一緒にいたのに、そんな事も分かんないのかよ」
分かってるからこそ、言ってるんじゃん。
バカ健介。
「あんたね、東京は怖い所なんだよ?それに、あんたが思ってるより、現実は厳しいの。いつもいつも自分の都合のいいようにはいかないんだよ?」
「わーかってるよ!うるさいな」
「分かってないから、言ってるんでしょ!」
私は恋愛対象にされてないことは百も承知だった。
素直に、健介の将来を心配していたんだよ。