伝えたい音
だけど本当は、

会えなくなるのが怖かったから。


ただ、素直になれなかっただけ。



だんだんと皆も認め始めて、健介はもう東京行きの便のチケットまで買ってしまってた。


修学旅行も新幹線だったから、私達は飛行機に乗った事がなかった。

だからそのチケットが、まるで健介を別世界へ連れて行ってしまう券に見えて、私は本当に困惑した。





本当は頑張ってこいって、つらくなったら、いつでも帰ってきなよって言ってあげたかった。

健介なら大丈夫って笑ってあげたかったのに。





とうとう私は最後まで、背中を押してあげれられなかった。




「またな」




寂しそうに呟いた。

それが、健介が東京に旅立つ前に私が聞いた、最後の言葉。


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