空の声
「なんでキスした。」
疑問系にもせず、棒読みで聞く。
だけどただにっこり笑うだけで答えなかった。
季節は夏。暑くてたまらない。
「あのさ、もっと離れてくんない?」
「だって日陰ここだけじゃん!」
小屋の窓から日差しが入り込み日陰は2人がギリギリ入るくらいしかなかった。
「はぁ・・・。てか、なんで転校してきたの?」
深いため息を吐いた。
「まぁいろいろ。俺独り暮らしなの。」
独り暮らしかぁ。うざい親がいなくて羨ましい。
しばらくの沈黙。
肌が密着しているせいか、妙にドキドキしてしまう。汗がつたう。臭わないかが心配だった。
「あっちぃ−。」
シャツをパタパタとし始めた。窓を見て空を眺める。
「綺麗・・・。」
あたしの声に空も窓の方を見た。
だんだんと眠気に襲われて知らぬ間に眠りについていた。

目が覚めたのはちょうど下校時間あたりだった。
壁に寄り掛かって寝ていたはずだが、いつのまにか地面に寝そべっていた。
起き上がろうとしたが、隣に空が寝ていてあたしを抱え込むようにして寝ていた。起こしちゃうと悪いよね・・・。
あたしは空の方に向き返り、寝そべった。
近くで良く見ると本当に整った顔。
空の頬を指でなぞる。
「なんだよ、エロいなぁ。」
寝ぼけた空の声。
急いで起き上がろうとするが、空の腕で起き上がれない。こいつ力入れてるな!
「離してよ!」
「最初に寄り添ってきたのは愛だぜ?俺の肩に。」
そんなの知らないし・・・。
「もういい!それより、もう帰る時間!」
あたしは携帯をつきつける。
「うわぁ、1日中寝てたのかよ、お前。マンションで会った時も途中で寝たよな。どんだけ寝たら気が済むんだよ!」
お腹をおさえて爆笑する。
「うっさい!あたし帰る!」
「よく1日さぼっててばれなかったよな〜。」
カバンを取りに教室に向かうあたしの後ろで空はごちゃごちゃと言っていた。


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