空の声
誰もいない家に着く。
「ねぇ、マンション行かね?」
空からの突然な提案。親もいないし、いっか?
「うん、行こっ。」
マンションへ向かうまで、空はずっと寂しそうな瞳をしていた。なんだかあたしは不安になって、握られている手に力をこめた。
マンションに着き、屋上へ行く。
ドアを開けると冷たい風が吹き荒れた。
「さぶっ・・・。」
そう言いながらも小屋の上へと登り、寝そべる。
「俺ら、ここで会ったんだな。」
夜空を隣で眺める空が言う。
「そうだね。最初の態度にあたしちょってイラッときてた。」
あたしは笑いながら空の方を見る。
空は苦笑いをし
「俺、世の中に興味がなかったんだよ。でも愛は違った。俺と同じ気がしたんだ。だから、だからあの時・・・。」
あの時?あの時っついつのこと?
「あの時が、何?」
あたしの質問には答えてくれない。空はこういう事が多い。
「このマンション、冬休み中に取り壊しするんだって。」
「へぇ〜・・・。」
どうしてそんなに寂しそうなのか、この時のあたしにはまだわからなかった。
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