短編集『手紙』
「はぁ、疲れた」

いつものように弱音を吐いて、いつものように郵便受けを開いた。

バサバサとなだれ落ちてきたのは、相変わらず見当違いのDMやケータリングのチラシばかり。扉の内側に貼り付けた合鍵は、これもガムテープでくっ付いたまま。

……やっぱり帰って来る気はないんだろうか。いや、そうだとしても希望は捨てたくない。

今までは3日と空けずに舞い戻って来た幸子。今回だっていつもと同じだろうと、僕はタカをくくっていたんだ。

しかし幸子が出て行ってはや2週間。

携帯を持たない彼女には連絡の付けようがないから真意を確かめる術は無いけど、どうやら今度ばかりは本気みたいだ。

僕は溜め息まじりで地面にばら撒かれた紙屑を掻き集めて、備え付けのゴミ箱に捨てる。こんなぼろアパートに住まわせておきながら、散らかすと大家がうるさいから仕方ない。

錆でボロボロになった階段を上がりながら、選り分けた僕宛の封筒をチェックする。


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