短編集『手紙』
ガンッ
「イタッ!」
また隣のガキの一輪車だ。こいつのペダルは狙いすましたかのように、弁慶の泣きなんちゃらを突いてくる。
今度邪魔な場所に置いてあったら、乗り込んで苦情を言ってやろうと丁度思ってた所だ。
だけど、封筒を選り分けながら、よそ見しながらで歩いていた僕も悪い。今回ばかりは許してやる事にした。
すると一通の封筒が目にとまる。
「なんだ? これ。随分薄気味悪いなあ。『お前を誰よりも知っている男』なんて書いてある」
そう思わず読み上げてしまう程に、それは奇妙だった。住所も無ければ消印も無い。それが捺されるべき切手さえ貼ってないからだ。
新手のストーカーだろうか。いや女からならまだしも……いやいやゲイという可能性も有る。
玄関先で思いあぐねていても仕方がない、不審者に間違われてしまう可能性も否めない。
木が腐っていて立て付けの悪いドアをこじ開け、待ち人の居ない我が家へ逃げ込むようにして帰宅した。
「イタッ!」
また隣のガキの一輪車だ。こいつのペダルは狙いすましたかのように、弁慶の泣きなんちゃらを突いてくる。
今度邪魔な場所に置いてあったら、乗り込んで苦情を言ってやろうと丁度思ってた所だ。
だけど、封筒を選り分けながら、よそ見しながらで歩いていた僕も悪い。今回ばかりは許してやる事にした。
すると一通の封筒が目にとまる。
「なんだ? これ。随分薄気味悪いなあ。『お前を誰よりも知っている男』なんて書いてある」
そう思わず読み上げてしまう程に、それは奇妙だった。住所も無ければ消印も無い。それが捺されるべき切手さえ貼ってないからだ。
新手のストーカーだろうか。いや女からならまだしも……いやいやゲイという可能性も有る。
玄関先で思いあぐねていても仕方がない、不審者に間違われてしまう可能性も否めない。
木が腐っていて立て付けの悪いドアをこじ開け、待ち人の居ない我が家へ逃げ込むようにして帰宅した。