短編集『手紙』
「ただいま」

そう言いながら壁のスイッチを入れる。豆電球になっていた電灯がひっそりと部屋を照らす。

「お帰りなさい」

重いナップザックを万年ゴタツの上に置く。

「んな訳ないよな」

自分で自分に返答してしまった気恥ずかしさにこめかみを爪で掻いて、紐を2度引っ張った。

「う〜ん……危ない物は入ってなさそうだ」

全灯した蛍光灯に例の封筒を透かして見るけど、一枚紙で出来たその中に、危険な物は認められない。

「よしっ、とにかく開けてみよう」

意を決して開封すると、中には薄い便箋が1枚きり。


前略俺へ

どうだ。そろそろ幸子は出て行ったか?

お前は自分が振られたのを認めたくなくて、ただウジウジ思い悩んでいるんだろう。

心配しなくても、幸子はいい男を見付けてスッカリよろしくヤッてるさ!

お前が大好きだった大きい乳を揺らしてな。

はっはっはっ!


                  草々


「一応手紙の書き方作法は心得ているじゃないか……」


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