短編集『手紙』
確かにサチ……幸子はスルのが好きだった。

いつも言葉では恥ずかしがってた癖に、僕がその恥ずかしい事をしてやると、隣の隣にも聞こえる程のヨガリ声を出してたっけ。

今になって考えればあれは、全て彼女の欲望の裏返しだったんじゃないかとも思う。僕が望む以上に幸子は、その行為に対して執着を見せていたから。

大きい胸が好きだというのも何故か知られている。幸子の胸はその肉付きのいい身体を差し引いても尚、尋常じゃない大きさだった。

僕はその塊に挟まれて果てるのが何よりの幸福だったんだ。

「畜生、腹が立つ! 僕の何を知ってるって言うんだ!」

しかしそんな性的嗜好こそ、言い当てるのは困難な筈だ。何しろ今の今迄他人に自分の性癖を話した事なんか無いんだから。

「そうだ。手懸かりになるような物は無いのか?」

僕はもう一度便箋と、封筒は解体迄して隅々調べた。何の変哲もない紙にプリントアウトされた文字。どう頑張ってもそれ以上の物は見付けられない。


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