短編集『手紙』
「ああっ、しまった!」
野菜炒めが焦げている。気を散らしながら作っていたので、玉ねぎなんかは所々で真っ黒になっていた。
「却って芳ばしいってもんさ」
茶碗に山盛りのご飯と共に掻き込むそれは、僕の心を写しているかのようにほろ苦かった。
食事の前に張っていたお湯が丁度いい具合に入っている。僕は部屋で全裸になって準備した。
姿見に写った自分を見ながら考える。特別アレがでかい訳ではないし、テクニックも駆け引きも凡人以下の僕が幸子に見限られたのは当然だったんだ。
「サチ……」
浴槽に入りながら、溢れ出る湯の音に隠れて幸子の名を呼んでみる。
今日は早く布団を敷いて寝るのが得策だ。僕にこんな女々しい一面が有ったなんて、僕自身初めて気付いた事だったから。
「考えても仕方ない。明日の仕事にも響くからもう寝るっ! すぐ寝る!」
意味の無い気合いを入れて薄い煎餅布団を被る。
「あ、電気」
僕は紐を2回引いて、豆電球の薄暗い光と共に微睡マドロミみに包まれた。
野菜炒めが焦げている。気を散らしながら作っていたので、玉ねぎなんかは所々で真っ黒になっていた。
「却って芳ばしいってもんさ」
茶碗に山盛りのご飯と共に掻き込むそれは、僕の心を写しているかのようにほろ苦かった。
食事の前に張っていたお湯が丁度いい具合に入っている。僕は部屋で全裸になって準備した。
姿見に写った自分を見ながら考える。特別アレがでかい訳ではないし、テクニックも駆け引きも凡人以下の僕が幸子に見限られたのは当然だったんだ。
「サチ……」
浴槽に入りながら、溢れ出る湯の音に隠れて幸子の名を呼んでみる。
今日は早く布団を敷いて寝るのが得策だ。僕にこんな女々しい一面が有ったなんて、僕自身初めて気付いた事だったから。
「考えても仕方ない。明日の仕事にも響くからもう寝るっ! すぐ寝る!」
意味の無い気合いを入れて薄い煎餅布団を被る。
「あ、電気」
僕は紐を2回引いて、豆電球の薄暗い光と共に微睡マドロミみに包まれた。