短編集『手紙』
「おはよう。今日はえらく明るいな。何かいいことでも有ったのか? いいよなぁ」

同僚から羨まれる程、僕は満足気に笑いながら歩いていたみたいだ。

「そうかい? 昨日の夢が楽しかったからかな」

「1日経っただけでこうも違うもんかね。宝くじでも当たったか?」

「ははっ、まさか」

いつものとりとめもない会話を交わしてまた、僕らは部所に就いた。

でもそんな浮わついた気持ちの時でさえ、身体に染み付いたいつもの仕事は僕を普段通りに働かせた。

そして昼になりいつものC定食を食べ、僕の昼寝場所に段ボールを敷いて横になる。

午後は5分前のベルに叩き起こされて、午前中と変わらぬ単純作業が僕を待っている。

就職当時は仕事に対するプライドを見出だす為に、ここを人間が担当する理由を、色々とこじ付けてみたりした。しかし何の事はない。その場所の産業ロボットは値段がかさむから、寧ろ人手を使った方が安く上がるんだそうだ。


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