短編集『手紙』
そんなお安い機械みたいなモノに成り下がってしまった僕は、でもこれからの人生に光明が見えた気がして、堪らなく嬉しかった。

「お疲れ様でした」

「お疲れっしたぁ」

時間目一杯迄働いても、心なしかちっとも疲れてない。僕の高揚した気持ちがそうさせているみたいだった。

「はぁ、疲れた」

しかし習慣と言うのは恐ろしい物で、家に辿り着いた僕はいつものように弱音を吐いてしまう。

そして当然いつものように郵便受けを開いた。いつものようにバサバサとなだれ落ちてくるのは見当違いのDMやケータリングのチラシ。これもまたいつものように、貼り付けた合鍵はそのまま変わってない。

「サチがクズだってさ。いやゴミだったか?」

それ程胸が大きくて美貌の女性。しかもたぶん前のままでは出会う事さえ出来なかったであろう上質な女の子が、僕との邂逅の為に今、どこかに存在している。

それを思っただけで僕は、身体中の血液が下半身の一点に集められていくのを感じていた。


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