短編集『手紙』
便箋に書かれた血文字は確かに、この世の物とは思えない程の禍々しい雰囲気を漂わせている。

このひと月に有ったことを思い返す毎に、手紙の主が『人に非ず者』であることの裏付けとなって、私を震え上がらせる。

そうだ。

只の人に過ぎない私が、奴から逃れるすべは到底無い。

その絶望的な結論に達するまで、大した時間は掛からなかった。


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