短編集『手紙』
あと10分。

私は近寄る気配を探ろうと耳をそば立てるが、意識が朦朧として自分がどこに居るのかさえ解らなくなってきた。

水を飲んでもそれが体内に入っていっている感覚が無い。

来るな!

死にたくない!

消えたくなんかない!

私の血液は死への恐怖で粟立っている。

視界は狭まり、立っているのか横になっているのか、もはや本当に生存しているのかさえ解らなくなってしまった。


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