短編集『手紙』
或る男子校の昇降口。

折角敷かれてあるスノコはほうぼうにズレていて、その役割は果たされていない。

そしてスポーツバッグやバスケやバレーのボール、ヘルメットやスパイクなどが点々と放り出されている。

1人の男子生徒がその惨状を気にすることなくやって来て、自分の下駄箱を開けた。

「な、なんだこりゃ」

後から付いてきた友人も下駄箱を覗き込む。そこにはハートマークのシールがはられた封筒が一枚。

「ラブレターか? これ」

「俺はそんな趣味ねえぞ!」

男子校で貰うラブレター。女教師や数名の事務・用務員以外に女性は居ない。

「保健の先生だったりして」

「あり得ねぇ」

「とにかく開けてみようぜ?」

2人は学校帰りに良く寄る喫茶店『みるく』へ自転車を走らせた。


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