短編集『手紙』
「そう。ならいいけど……」

「よかないよ! アイツ。絶対ヤバイって!」

「今はまだいいけどあの女、その内絶対正体現すゼ?」

「アイツ、あのセンコーみたいに、山ん中で見付かんじゃね?」

「ま、まさかぁ!」

いつもの会話も、前のような明るさは微塵も無かった。

「可奈子」

「なぁに? 貴方」

「俺、裸で抱き合いたいんだけど」

「!」

可奈子は暫く考えを巡らせていたが、一段低いトーンで答えた。

「いいわよ? 後悔しないなら」

彼らは今まで、着衣のままでしか身体を交わしていなかったのだ。

「しないよ。何を後悔するって言うんだよ」

「フフフ。それは見てのお楽しみ」

可奈子はそう言うと、全身を覆っていた黒い衣装を脱ぎ出した。


< 71 / 76 >

この作品をシェア

pagetop