短編集『手紙』
……確かに。

あんなに美しい花びらが挟まっていたから、
私と彼女の貝殻が一つに合わさる事は無かったのだ。



しかし!



それよりも、あんなうすらデカいのが彼女だったなんて!

いくらなんでも酷過ぎる。

アレが相手で一体誰が盛り上がれるというのだ。


ん?

何だ? 小さい封筒が入っている。


中には期限が切れたパスポートの切れ端と便箋……。



追伸

 最初に貴方が話されたのが私です。

後から来たのは演劇をやっている私の弟です。

 貴方は眼鏡が嫌いな私の為に、それを外してらっしゃったから解らなかったのかも知れませんね。

 試すような事をしてしまってごめんなさい、さようなら。



 同封されている彼女の名前が書かれた切れ端には、あの時会った美しい女性が微笑んでいた。


《終幕》


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