政略結婚
蓮はまだ夜も明けきらないこの時間に一人目を覚ました。


隣を見れば数時間前に自分の妻になった綾香の姿。


腰まで届くほどの栗色の髪はゆるやかに波打ち彼女の滑らかな肌にかかる。


先程まで自分を見つめていた瞳は、しっかりと閉じられている。


彼女は自分に寄り添うわけでもなくその身を丸めて自分に背を向け、眠っていた。


彼女にしてみれば必要以上に自分に肌を触られるのは不快なのだろう。


当然だ。


こんなことをしても手に入れられるのは体だけだとは分かっていた。


心を手に入れられない虚しさが自分を襲う。
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