政略結婚
彼女の寝息は規則正しく深いもので、きちんと眠りに就いていることが窺え、安心する。


夢の中で暗い自分から解放してあげたい。


もう一度自分も寝ようと身を傾けた時、ふとまだやり残した仕事が書斎にあるのを思いだし、まだ気だるさが残る体を再び起こした。


「――…さ…ぃ」


ふいに背を向ける自分に後ろから微かな声がし、起こしてしまったかと振り向いた。


「……綾」

――香?っと言葉を続けるはずだった。


「――×××…、ごめ…な…さ……」


その言葉に眉をひそめる。


名前は聞き取れなかった。


でも、思い当たる人物は一人いる。

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