政略結婚
想い
見慣れない天井を見つめ、昨日会ったことを思い出す。


夜明け前の薄暗い寝室。


先ほどまで隣にいたはずの人は今は見当たらない。


そこにはまだ微かにぬくもりがあるから、いなくなってからそう時間は経っていないと思う。


今この場に彼がいない事に感謝する。


少しでいいから、一人の時間が欲しい。


「大輔、ごめんね」


そう告げた時の彼の顔が忘れられない。


私を大事にしてくれた彼を自分は深く傷つけた。


別れる理由は「結婚が決まった」とだけ告げた。


叔父の会社のことは、黙っていた。
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